”アーリーアダプター”のそばに身を置いてみる

こんにちは。

スクーに出演しました

先日、スクーに出演しました。

今回はVUCA時代の働き方について。

schoo.jp

前回出演時(5年半前)は

99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ

を元にお話ししました。

今回はリーダー層向けとは銘打ってはいないものの、VUCA時代に戸惑う、または時代の変化を気づいてすらいないミドル層向けに作った

本当は大切なのに誰も教えてくれないVUCA時代の仕事のキホン

の内容を軸に講義をしました。

VUCA時代が来た!と言われても、それが当たり前の世代にしてみれば、特に違和感ないわけですからね。

 

 VUCA時代に向き合うべき世代

その時代のインパクトに、ある意味戸惑いながら、そしてどちらかというと”向かい風”的に接する世代が、もっとも大きく影響を受けるのではないかと思います。

とはいえ悲観ばかりするものでもなく、対処の仕方はあると思っています。

言い方を変えれば、うまく気づいて対応すれば、そのインパクトを追い風として受けられるわけです。

ただし、気づかないまま従来の常識のとおりに対応してしまうと、いつの間にか時代に取り残されている・・・

…で済めばいいです。

実はそれどころか、”抵抗勢力”とか”老害”になっている、なんていうことにもなりかねません。

当の本人的には「ついこの前まで」自分や自分の世代が世の中をリードしてたはずなんですけどね。

「自分たちが最前線」と思うあまり、新しい情報触れることなく過ごしてしまい、本来自分が戦っていたはずの相手に成り下がってしまう、という何とも皮肉な状態になりかねません。

(ミドルと言ってますが、場合によっては20代後半からすでに老害モードに入っているように見える例も多々ありますが)

そんな、リスキーな世代に対していくつかのメッセージを発信しました。

一つは、以前も本稿でコメントした「コンフォートゾーンから出てみる」というものです。 

eitarokono.hatenablog.com

 詳細はリンク先をご覧いただければと思います。このメッセージには、実はすでに反響がありまして、あの一節を読んで一歩踏み出してみた、という声も複数いただいています。

「そんなこと・・・」から始める

そして、今回取り上げるのは”アーリーアダプター”のそばに身を置く、というメッセージです。

ここでのメッセージは、「もちろん、自分自身がイノベーターであり、アーリーアダプターであるのがいい前提ではあるものの、そうでないからといって諦める必要はない。イノベーターやアーリーアダプターのコミュニティとの接点を持っているだけでも有効である」というものです。

具体的には、前述の”コンフォートゾーン”から出てストレッチゾーンに身を置くのもそうです。

さらに現実的には、いきなりそこまでいくのではなくイノベーターやアーリーアダプターの発信する情報に触れるだけでもかなり刺激を受け、自分の行動も変わってきます。
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ちょっとしたツールの使い方であったり、コミュニケーションの取り方であったり。

ちょっとだけ抵抗あるけど、あ、こんなやり方や表現があるんだ、と思うものを取り入れてみる。不思議に思ったら、これってどういうこと?なんて聞いてみる。そんなことだけでもいいのです。

アポイントも最近では普通にメッセンジャーやラインで取るのでしょうが、まだ抵抗があるなんてことも世代によっては起こります。

そういうものから少しずつ慣らしていくと、手遅れや抵抗勢力化、老害化を防ぐことができるのです。

「そんなこと・・・?」から始めてみましょう。

皆さんはどう思われますか?

 

共感型の著作:誰かを否定しないということ

こんにちは。

今日は、なるほどな、と思った書籍の読書メモです。

 もともとタイトルは知っていたけど、ちょっと手には取れてなかった書籍ですが、ある人に薦められたこともあり、購入して読んでみました。

僕たちはもう帰りたい(ライツ社)

僕たちはもう帰りたい(ライツ社)

 

 感想としては、「ビジネス書のカテゴリーでも、こういう描き方があるんだー」というものでした。

ビジネス書のような実用書って、「こうすればいい」とか「こうするべきだと思います」という主張があるものですよね。

最近では場合によっては「こういうことする人はバカです」「これをしないなんて、アホではないでしょうか」という表現をするものが出版されていたりします。

相当明確な主張をしてますよね。

もちろん、この「僕たちはもう帰りたい」も伝えたいこと、すなわち主張はあります。

しかしドラマ仕立てのコミックの表現方法を活かしながら、主張をする側とその反対側にいる人それぞれに事情があり、どちらかが悪いわけじゃない、という描き方をしているところが新しい発見でした。

読む側に何かを突きつけるのではなく、共感をしてもらうことで、変わるきっかけを掴めるようになるのでは、という著者の期待感が見えてきた気がしたのです。

著者の方の真意は確かめた訳ではありませんが、そんな感覚を強く持ちました。

僕も、著作を出したりネットで文書を発信する時には、なるべく誰かを傷つけないように気をつけた表現にするようにはしてますが、仕事の中ではかなり主張をすることが多いです。

特に、ずるい人とか、卑怯な人とか、嘘をつく人とか、無駄に威張る人とか。この手のことにはかなり強くアタリたくなる衝動に駆られます。

でも、相手に変わってほしい場合、強く主張してアタったとしても、その人は間違いなく変わってくれません。

共感を示しつつ、時間をかけて気づいてもらうことの方が近道だったりすることも多いです。

当初新しい考え方を示した時に、違和感や保守的な反応を示されることは普通にあります。

しかし、相手が誠実で素直で、謙虚で前向きな人の場合であれば、共感を示しつつ訴えていけば変わってもらえることが経験的には多いです。

読者に対しても、そのようにアプローチしてみる、というのは大切な視点だな、と思った次第です。

皆さんはどう思われますか?

 

(あ、表現方法についてだけのコメントになっちゃったな。中身はぜひ手にとってみてください!読む価値有りです)

 

 

コンフォートゾーンから出てみる

こんにちは。

名著の一説w

 先日出版した拙著の154ページに、「3年経ったらコンフォートゾーンと考える」という項があります。

本当は大切なのに誰も教えてくれないVUCA時代の仕事のキホン

本当は大切なのに誰も教えてくれないVUCA時代の仕事のキホン

 

3年同じ仕事をしてしまったら、ある程度流れでできるようになり、新しい刺激や発見が少なくなって、成長スピードが落ちます。

で、遅くなりすぎた結果、老害になったり、そこから出たらもうどうにもならない体になってしまったり。

だからちゃんと成長するためには、あえてコンフォートゾーンから出て、以下の写真の図にあるようにストレッチゾーンに身を置くことが重要です。

…と言うことを解いた項です。

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ただ、これは「言うは易し、行うは難し」の世界です。

まず、自分がコンフォートゾーンにいることに、なかなか気づけません。

同じことをやっていてもやっぱり忙しいし。日々問題は発生するし。 短期的には価値を出しているように見える、と言うか事実、かなり価値を出しているため、人に頼られたりすることも増えて、これがなかなか難しいのです。

 さらに、仮に自分がコンフォートゾーンにいるな、と気づいたとしても、現在の場所を捨てて外に一歩踏み出すのは、本当に難しいです。

いろんな人に褒められるし、次のポジションも見えてきたりして、打算的にも直近はそこにいるほうがどうやら実入りも良いのは確実。

一歩出てしまうと、過去培ったものは一旦リセットされ、多くの部分を新たに始めなければなりません。

勇気がいることですよね。

周りだって心配します。

ですから3年経ったら動き出すのではなく、始めから3年後を想定した動きを取っていることが望ましいでしょう。

ネットワークを広げるとか、学習を開始するとか、資格取得や仕組み構築を前もって少しづつでもやっていると、「その時」が来た時のハードルが下がるわけです。

この準備がないと、先ほどの図のストレッチゾーンを超えたパニックゾーンに行ってしまい、ひっちゃきになって動かないといけなくなります。

そうするとコンフォートゾーンとのギャップがあまりに激しくなり、文字通りパニックになってパフォーマンスを出すどころじゃなくなりますので、注意が必要です。

新しい世界の刺激

で、なんで今こんなことを思ったかと言うと、最近新しい環境に身を置くようになって、毎日が充実しています。(まあ、当たり前ですが)

新しいネットワークもどんどん広がる中、SNSのタイムラインに流れてくる情報の内容がだいぶ変わってきたなあ、と感じる瞬間が増えています。

年齢問わず尊敬できる人との出会いも多々ありました。

新しい情報が加わると言うことは、視野が広がり、視点も高まる可能性が増える、ということだと思います。

新しい発見も増えて、刺激も増えています。(ちなみに、上がったとか増えたとか広がったとかばかりですが、ネットワークの平均年齢はかなり下がった!)

具体的には、タイムラインに流れてくる情報は今まではおじさんネタとか、社会問題、人事系の話題が中心でした。

それもいまだに流れてきますが、機械学習とかスタートアップ、ベンチャーキャピタルなどのネタ今まで以上に流れてくるようになったな、と言う印象です。

(まあ、これも当たり前ですが)

この歳にして、こんな”血湧き肉躍る”系の感覚を持てるのは幸せなことです。今回のは、何十年か忘れてた感覚なので、どうなるか楽しみです。 (すぐ慣れちゃうのかなぁ)

ただ、すごく楽しくて充実しているとはいえ、ラクしているかと言うとそういう訳ではありません。

やっぱり、新しいことをやるには時間はかけなければいけないし、その意味では睡眠不足になり体力も必要。今回は独立であることもあり気苦労も絶えません。

なのではしゃぎたい気持ちを抑え、調子に乗りすぎず、無理しながらも、しすぎたりはせず、やりくりはしています。

何しろ体だけは古くなっているのでそっちが一番メンテナンス必要ですね。

と言うことで、責任は取れないものの、コンフォートゾーンから出ることは全ての皆様におすすめします。

皆さんはどうお感じになりますか?

大組織を外から見て

こんにちは。

大企業からスタートアップに移り、外から大企業を見るようになって気づくことがあります。

細かいとこまで含めるといくつかあるんですが、その中でも大きいのをひとつ。

具体的には、看板で仕事をする人と、そういうものを背負わずにピュアに仕事をしている人がいることに改めて認識しました。(これ、自戒を込めつつね。ってか、わかってたことですけど。)

大企業の看板ってやっぱりそれなりの迫力があります。

意識して笠に着るわけではないのでしょうが、どうしてもそうなってくるんでしょうね。

名刺交換した後、いわゆる格下と認識すると言葉遣いも含めだいぶ変わってくる例もあります。

アポイントを取って訪問しても、場合によっては散々待たされた挙句、応接エリアに通してもらえもせず、「場所取れなかったんで」と受付脇の椅子で対応いただく感じです。

用件を伝えた上で訪問したにも関わらず、そんなニーズは無い、と言われることも。業者なんだから無駄足は当然、なんですかね。

まあ、アポイントをとるときにもっと詰めればいいんでしょうが。

少なくとも大企業の看板があった時はそういう扱いは無いわけです。

ですので、もちろん僕の方も色々今までの感覚を捨てて、新しい形でのアプローチを取るようにはしています。

個人的にはむしろ新しい刺激として楽しむようにしてます。が限られた時間で成果を出さねばならないので乗り越えなければなりません。

目的はお客さんの”本来の”成功のために製品やサービスを役に立ててもらうことですからね。

まあ、いろいろ気づきは多いです。

一方で、世界に冠たるエクセレントカンパニーや、国を動かすような立場の方でも(だからこそ⁈)、自分の立場に驕ることなく、そして相手の肩書きだけを見るのではなく、言ってる内容やサービスの価値をシンプルに見て判断している人もおられます。

そういう方にお会いすると、改めて、その慧眼や姿勢に感服させられます。

そんなことを考えている内に、こんな記事がタイムラインに目に流れてきました。

diamond.jp

いかがでしょう?年齢に限らず伝わるものありますよね。

自分も、一歩踏み間違えればいつでもこうなり得るなあ、と思います。

大企業なりの苦労がわかるだけに。

事実、こういう人たちは、企業の看板を頼って意図的にサボってきたのかというと、そういうわけではありません。

むしろこれまで、色んなものを犠牲にして必死に組織の中で働いてきた人たちなわけです。

少しでも早い段階で、本人が気付きを得るきっかけがあれば良いのですけどね。

皆さんはどう思われますか?

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これからについて 〜人と組織を支援する仕事を深めます〜

こんにちは。

やりたいことを色々やる

前回は、このタイミングでIBMを離れることをご報告しました。

日頃考えていたことを整理して、IBMの良さを振り返る貴重な機会でした。

eitarokono.hatenablog.com

さて、今後ですが、時間をかけて準備してきたことを具体的に実行します。

大きくは、2つです。

①スタートアップに深く関与します。

②自分の会社を使った活動を本格化します。

①スタートアップに深く関与します。

どちらも、自分が目指す”ホワイトカラーの生産性向上に貢献する”というキャリア目標に合致していて、やりがいを感じられる仕事という観点で決めました。

①スタートアップに深く関与します。

まず、①について。

具体的な社名については、近いうちに会社から発表する形になると思います。改めてその時にお知らせします。

決める過程でも、多くの素晴らしい出会いがあり、その度ごとに学ぶところが大きかったのが想定外の収穫でした。

45歳という年齢になっても、動いてみれば世の中には本当に様々な機会に溢れているのだと改めて実感しました。

もし迷っている人がいたら、境界線を自分で作らないで、まずは越境してみてはいかがでしょうか。

で、のぞいてみた結果、戻るもよし、進むもよし。

たとえ戻ったとしても迷いを断ち切った上での決断なので、取り組み方も視野や視点も大きく異なったものになるでしょう。

少なくとも何もしないで悶々としていても次のステップには行きませんよね。

全ての機会が本当に魅力的に見えたのですが、その中でも特に、自分の時間を投じたいと思った縁に対して本気で関与することに決めました。

製品・サービスも、経営者も、共に働くメンバーも、投資家も僕にとっては贅沢なほど素晴らしいと感じています。

②自分の会社を使った活動を本格化します。

表立って活動します、といっても良いかもしれません。

もともとIBMの承認を得て、法人:株式会社Eight Arrowsを立ち上げて、IBM以外の仕事を一本に集約していたのですが、こちらの仕事を継続します。

www.eight-arrows.com

もちろん、①のスタートアップの仕事を100%という選択肢もあるとは思うのですが、自分にとって両方やることの方が自然な気がしたのと、両方やることでどちらにも相乗効果があるという確信があったのです。

ですので、関係各所の理解を得つつ、大変かもしれませんがこのような形を選択しました。

具体的には、出版活動や講演・研修活動、グロービスへの登壇は従来通り続けていきます。

また、IBMを離れますので、従来は利益相反の可能性があったような領域も担当できるようになりました。

法人の組織をお客様として、人材開発や組織開発の支援を様々な形で実行していきます。

ちなみに、これまでのキャリアの中で、「コンサルタント」という名刺を持つことは多かったのですが、社会に出た時から「経営のコンサルタント」とは、「社長から直接相談される人」という定義が自分の中であったため、会社の看板で仕事をしているうちは、極力その肩書きを使わないようにしてきました。

コンサルティング会社”に入っただけで「コンサル」という肩書きを前面に出す人が増えたことによって、世間に出来上がってしまったマイナスイメージがあったことも理由の一つです。(あくまでも僕の価値観ですけど。)

なので、例えば資料の中で僕の肩書きとして使われた時は修正しましたし、プロフィールにも使わなければいけない時以外は一切使いませんでした。

ある人の携帯の電話帳に「コンサル河野さん」と登録してあったものを、変えてください、とお願いして変更してもらったことさえあります。

ただ、最近実際に社長や経営者から直接相談を受けることが増え始めたため、その言葉に対する拒否反応が消え始めました。いずれ堂々と使える時が来るのかもしれません。

そのような経緯から、コンサルティング”的”な仕事もどんどんやっていきます。

人事部門を支援するソフトウェアカンパニーとも代理店契約したり、複数のコンサルティング会社と提携をして、規模の小ささを補っていきます。

他にも、以前この場でも紹介しましたが、有志とイベントなどを開催して世の中にメッセージを発信していければとも思っています。

eitarokono.hatenablog.com

こちらはまだビジネスとしての建て付けが十分ではないですが、焦らず継続していけたらと思います。こちらはこちらで楽しみです。

Building Bridges to the Better!

我が株式会社Eight Arrowsのスローガンは”Building Bridges to the Better”です。

今まで僕が四半世紀以上に渡って培ってきたネットワークや多領域にわたる経験を、社会に還元していきます。

と同時にその活動を通じて、さらに高いレベルでイノベーションを起こしていきたいと考えています。

是非、アイデアやお困りごとがありましたら、お声がけください。何らかお役に立てることがあるのではないかと思っています。

ご用命はこちらのサイトまで!

河野英太郎が代表を務める株式会社Eight Arrows' Site

これらの活動は、すでに大半は動き始めているのですが、正直いうと時間や体力的にはとんでもない負荷です。

ですが、気持ちは、あまりにも爽やかな感じです。

皆様には、引き続きのご縁を賜れますよう、お願い申し上げます。

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IBMのよいところ

こんにちは。

IBMの素晴らしさについて考える

ここらでちょっとIBMのよいところについて整理したくなったので、改めて考えてみました。

ちなみに、毎週書いているこのブログ、日曜日の夜から月曜日の朝にかけて書くことが多いのですが、日曜日の午後、プールで泳いでいる時に内容について考えることが大半です。今回も25Mプールを往復しながら考えました。

IBMには都合15年以上所属しているので、色々素晴らしい経験もしましたし、悔しかったり腹が立ったりすることも多かったのですが、これはどこにいたって同じこと。

ただ、その経験を通じて本当に様々なことを学びました。レベルもまちまちですが、IBMのその特徴は、さっと整理すると大きく3つほど考えられると思います。

①教科書通りの組織運営

文民統制

③(Valueのもとに集った)人

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①教科書通りの組織運営

IBMは100年以上続く老舗企業です。そして、IT産業というめまぐるしく変わる業界の中で、このポジションを継続している数少ない、というか唯一の企業だと言えます。

IBMの歴史=業界の歴史と言っても大きくは間違っていないと思います。

以前、年代ごとのIBMのライバルを整理したことがあるのですが、20年遡ると、もう存在すらしていない会社がほとんどです。

もしかしたら20年後、今のライバルたちも存在していないのかもしれません。(もちろん断言できませんけどね!)

この長生きの原点ともなる要素が、教科書通りの組織運営だと思うのです。

ただし、教科書を見て「あ、知ってる知ってる」というレベルではありません。とことん追求して実行するのです。そここそが差別化要素だったりします。

だから、片や先進の経営情報を仕入れておく。そしてもう一方でIBMの内部で落ちてくる指示や依頼、情報をみる。

そうすると、会社の意思が何で、どの理論に基づいて、何を目指しているかがはっきりわかるのです。

何度も何度も、何度もその経験をしました。

ですから、ほんのたまに、意味を全く理解せずに会社の指示だけおうむ返しのように伝達してくる管理職がいたのですが、そういう人に対して、意味を説明してあげることもできます。間違った指示も訂正してあげることができるのです。

このようにIBMは組織腐敗を防いでいるのだな、ということがよくわかりました。

よくIBMについてお話しする時、僕はIBMをローマ(帝国)と被るという言い方をします。

飛び道具を連発するわけではないけれど、やるべきことを早い段階からやりきっている組織であり、それでいて常に変化を厭わない組織である、という意味です。

目標管理制度とそれに基づく業績評価が世に流行れば、100%の実施率にこだわってやりますし、No Ratingが動き出したら手のひらを返すようにいち早くNo Ratingを導入します。営業の管理ツールを導入したら、とことん使い倒します。まるで、重装歩兵を整理し使い倒したり、それが動くためのローマ街道を整理したり。ローマ帝国の行動と酷似しています。

今日本社会で定着化しつつあるダイバーシティの考え方も20世紀の頃から本気で取り組んでいます。属州や奴隷階級から皇帝を出し続けたローマ帝国にも同じような考え方があります。

そういうシステムを守りながら、王政→元老院制→帝政などと変化をし続け、最後は敵視していたキリスト教まで取り入れてしまうという柔軟性を見せたのがローマ。

IBMもレジや肉屋のはかりのような“ビジネスマシーン”の生産販売から始まり、パンチカードで情報を扱うようになってから、コンピュータの生産、システム開発、プロセスの引き受け、そしてAIまで、どんどん変化を続けています。

飛び道具を狙って足元がおろそかになることの無いように、常に基本だけは100%に近いレベルでやりきる経営が結局はイノベーションを生み出し、より長く、強く生きる前提である、ということを学びました。

この考え方は僕のDNAに染み込んでいて、今でも武器としてかなりのレベルで通用するな、と思っています。

文民統制

二つ目は、文民統制です。ここでのこの言葉の使い方は僕の考え出したものなのですが、技術者優位の組織運営のことをさしています。

対義語は軍政ですかね。

軍政までは行かないまでも戦前の日本は軍部大臣現役武官制というのをひいていたようで軍部が暴走し、国が方向を過ったということになっています。

これと同じで、テクノロジーカンパニーが暴走する瞬間があります。

それは、技術者がないがしろにされた瞬間です。もっとわかりやすく言えば、営業出身者(軍部的な人)が技術者(文民的な人)の言うことを聞かないときに、組織は誤った方向に進みます。

例えば、できもしないプロジェクトプランを作って、クライアントから案件を受注してしまうような事態です。

いわゆるトラブルプロジェクトが生成される瞬間ですね。

もちろん、営業機能は必要です。しかし自分たちの活動は技術があって初めて成立するのだと言うことを忘れてはいけません。

IBMは、技術者を厚遇する制度を伝統的に維持していますし、コミュニティ活動を重視する文化も努力をして堅持しています。

技術マインドを持った営業担当も多く、営業マインドを持った技術者もそれぞれの場で研鑽し続けています。

IBMは営業の会社だ」と言う言葉を耳にすることは、多々ありましたが、そう言うことを言う人は信頼を得られていませんでした。まあ、組織を維持しているカルチャーに反しているわけですから当然ですけどね。

この文民統制も、IBMの強さの秘密です。

③(Valueのもとに集った)人

以前、GlobisでIBMを特集した4回連続の講義に講師として関わった時、「IBMにい続ける理由は何か?」と受講生に問われました。

その時に僕は「IBMにいる、人と技術だ」と答えました。

どの組織にも当てはまりますが、組織というのは人が全てです。今の所、人がいない組織はありません。

ただ、烏合の衆と強い組織の違いは、Valueを全員が共有しているかどうか、です。

IBMには共通の価値観があり、その歴史上一度だけ見直されたことがありますが、綿々と受け継がれています。

「お客様の成功」「イノベーション」を「信頼と責任」のもとに実現する集団です。

ちなみにValue の見直しの過程はDHBRにも掲載されましたし、そのことをダイヤモンドオンラインでもお話ししたことがあります。

www.dhbr.net

ありがちな「Valueなんて建前だ。数字が全てだ。」的な発言をする者が皆無とは言いません。

ただ、僕はそういう輩はIBMの人間として認めてこなかったので、ある意味、IBMのメンバーの範囲でいうと皆無かもしれませんが。

このValueの体現のために15年を使ってきた自負はあります。

 感謝

そんな思いから、今ではIBMに対して、感謝の気持ちしかありません。本当にありがとう、という気持ちです。

当然の事ながら、先に書いたように辛いことや腹の立つことはありましたが、それ以上に学んだことは多いです。

そして、これからも感謝し続けますし、応援もしていきたいと思います。

いみじくもIBM日本法人も日本人従業員の念願である”大政奉還”が成りました。(あ、これも僕の個人の言葉です。悪しからず)
japan.zdnet.com

山口さんについては、僕もお名前は出していないものの書籍の中で本人承諾のもと良い例としてなんどもコメントさせていただいており、その意味でも感謝です。

今後の日本IBMには期待ですね。

5月31日で二度目のIBM生活を終えます。森昌子さん風に言えば「三度目はありませんw」

が、巨人軍の監督は三度目ですしね。VUCA時代ですから何が起こるかはわかりませんが、今は森昌子さんと同じ心境です。

今後の身の振り方については、改めて近いうちに報告させていただきます。

そちらについても、是非よろしくお願いいたします。

Once an IBMer, always IBMer!

ありがとうございました。

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