こんにちは。
IBMの素晴らしさについて考える
ここらでちょっとIBMのよいところについて整理したくなったので、改めて考えてみました。
ちなみに、毎週書いているこのブログ、日曜日の夜から月曜日の朝にかけて書くことが多いのですが、日曜日の午後、プールで泳いでいる時に内容について考えることが大半です。今回も25Mプールを往復しながら考えました。
IBMには都合15年以上所属しているので、色々素晴らしい経験もしましたし、悔しかったり腹が立ったりすることも多かったのですが、これはどこにいたって同じこと。
ただ、その経験を通じて本当に様々なことを学びました。レベルもまちまちですが、IBMのその特徴は、さっと整理すると大きく3つほど考えられると思います。
①教科書通りの組織運営
②文民統制
③(Valueのもとに集った)人
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①教科書通りの組織運営
IBMは100年以上続く老舗企業です。そして、IT産業というめまぐるしく変わる業界の中で、このポジションを継続している数少ない、というか唯一の企業だと言えます。
IBMの歴史=業界の歴史と言っても大きくは間違っていないと思います。
以前、年代ごとのIBMのライバルを整理したことがあるのですが、20年遡ると、もう存在すらしていない会社がほとんどです。
もしかしたら20年後、今のライバルたちも存在していないのかもしれません。(もちろん断言できませんけどね!)
この長生きの原点ともなる要素が、教科書通りの組織運営だと思うのです。
ただし、教科書を見て「あ、知ってる知ってる」というレベルではありません。とことん追求して実行するのです。そここそが差別化要素だったりします。
だから、片や先進の経営情報を仕入れておく。そしてもう一方でIBMの内部で落ちてくる指示や依頼、情報をみる。
そうすると、会社の意思が何で、どの理論に基づいて、何を目指しているかがはっきりわかるのです。
何度も何度も、何度もその経験をしました。
ですから、ほんのたまに、意味を全く理解せずに会社の指示だけおうむ返しのように伝達してくる管理職がいたのですが、そういう人に対して、意味を説明してあげることもできます。間違った指示も訂正してあげることができるのです。
このようにIBMは組織腐敗を防いでいるのだな、ということがよくわかりました。
よくIBMについてお話しする時、僕はIBMをローマ(帝国)と被るという言い方をします。
飛び道具を連発するわけではないけれど、やるべきことを早い段階からやりきっている組織であり、それでいて常に変化を厭わない組織である、という意味です。
目標管理制度とそれに基づく業績評価が世に流行れば、100%の実施率にこだわってやりますし、No Ratingが動き出したら手のひらを返すようにいち早くNo Ratingを導入します。営業の管理ツールを導入したら、とことん使い倒します。まるで、重装歩兵を整理し使い倒したり、それが動くためのローマ街道を整理したり。ローマ帝国の行動と酷似しています。
今日本社会で定着化しつつあるダイバーシティの考え方も20世紀の頃から本気で取り組んでいます。属州や奴隷階級から皇帝を出し続けたローマ帝国にも同じような考え方があります。
そういうシステムを守りながら、王政→元老院制→帝政などと変化をし続け、最後は敵視していたキリスト教まで取り入れてしまうという柔軟性を見せたのがローマ。
IBMもレジや肉屋のはかりのような“ビジネスマシーン”の生産販売から始まり、パンチカードで情報を扱うようになってから、コンピュータの生産、システム開発、プロセスの引き受け、そしてAIまで、どんどん変化を続けています。
飛び道具を狙って足元がおろそかになることの無いように、常に基本だけは100%に近いレベルでやりきる経営が結局はイノベーションを生み出し、より長く、強く生きる前提である、ということを学びました。
この考え方は僕のDNAに染み込んでいて、今でも武器としてかなりのレベルで通用するな、と思っています。
二つ目は、文民統制です。ここでのこの言葉の使い方は僕の考え出したものなのですが、技術者優位の組織運営のことをさしています。
対義語は軍政ですかね。
軍政までは行かないまでも戦前の日本は軍部大臣現役武官制というのをひいていたようで軍部が暴走し、国が方向を過ったということになっています。
これと同じで、テクノロジーカンパニーが暴走する瞬間があります。
それは、技術者がないがしろにされた瞬間です。もっとわかりやすく言えば、営業出身者(軍部的な人)が技術者(文民的な人)の言うことを聞かないときに、組織は誤った方向に進みます。
例えば、できもしないプロジェクトプランを作って、クライアントから案件を受注してしまうような事態です。
いわゆるトラブルプロジェクトが生成される瞬間ですね。
もちろん、営業機能は必要です。しかし自分たちの活動は技術があって初めて成立するのだと言うことを忘れてはいけません。
IBMは、技術者を厚遇する制度を伝統的に維持していますし、コミュニティ活動を重視する文化も努力をして堅持しています。
技術マインドを持った営業担当も多く、営業マインドを持った技術者もそれぞれの場で研鑽し続けています。
「IBMは営業の会社だ」と言う言葉を耳にすることは、多々ありましたが、そう言うことを言う人は信頼を得られていませんでした。まあ、組織を維持しているカルチャーに反しているわけですから当然ですけどね。
この文民統制も、IBMの強さの秘密です。
③(Valueのもとに集った)人
以前、GlobisでIBMを特集した4回連続の講義に講師として関わった時、「IBMにい続ける理由は何か?」と受講生に問われました。
その時に僕は「IBMにいる、人と技術だ」と答えました。
どの組織にも当てはまりますが、組織というのは人が全てです。今の所、人がいない組織はありません。
ただ、烏合の衆と強い組織の違いは、Valueを全員が共有しているかどうか、です。
IBMには共通の価値観があり、その歴史上一度だけ見直されたことがありますが、綿々と受け継がれています。
「お客様の成功」「イノベーション」を「信頼と責任」のもとに実現する集団です。
ちなみにValue の見直しの過程はDHBRにも掲載されましたし、そのことをダイヤモンドオンラインでもお話ししたことがあります。
www.dhbr.net
ありがちな「Valueなんて建前だ。数字が全てだ。」的な発言をする者が皆無とは言いません。
ただ、僕はそういう輩はIBMの人間として認めてこなかったので、ある意味、IBMのメンバーの範囲でいうと皆無かもしれませんが。
このValueの体現のために15年を使ってきた自負はあります。
感謝
そんな思いから、今ではIBMに対して、感謝の気持ちしかありません。本当にありがとう、という気持ちです。
当然の事ながら、先に書いたように辛いことや腹の立つことはありましたが、それ以上に学んだことは多いです。
そして、これからも感謝し続けますし、応援もしていきたいと思います。
いみじくもIBM日本法人も日本人従業員の念願である”大政奉還”が成りました。(あ、これも僕の個人の言葉です。悪しからず)
japan.zdnet.com
山口さんについては、僕もお名前は出していないものの書籍の中で本人承諾のもと良い例としてなんどもコメントさせていただいており、その意味でも感謝です。
今後の日本IBMには期待ですね。
5月31日で二度目のIBM生活を終えます。森昌子さん風に言えば「三度目はありませんw」
が、巨人軍の監督は三度目ですしね。VUCA時代ですから何が起こるかはわかりませんが、今は森昌子さんと同じ心境です。
今後の身の振り方については、改めて近いうちに報告させていただきます。
そちらについても、是非よろしくお願いいたします。
Once an IBMer, always IBMer!
ありがとうございました。