長編を読み終えた 浅田次郎の蒼穹の昴シリーズ

こんにちは。

今週末、浅田次郎著「蒼穹の昴」シリーズを読み終えました。文庫本は10冊で、最新作は単行本なので4冊、合計14冊でした。

本稿のテーマの「ホワイトカラーの生産性」とも通じる部分があると思ったので読後感も含めメモ。

「天命」にまつわる物語

蒼穹の昴」シリーズは、清朝末期から満州国ができるあたりまでの中国を舞台にした歴史小説です。

どうだろう、10月8日に最初の購入履歴があるので2ヶ月以上ですね、この世界に浸ることができました。

なんか不思議な表現ですが、日々の仕事や生活以外の別な「場」をこの間持ち続けていられたのがとても幸せでした。

どうしても移動時間ですらスマホを使って情報収拾・発信をしてしまう時代です。

でも本を開いて、スッとこの物語に移動できると、文字通り時代や場所を超えて旅行に行った気分になれて、だいぶお安い中国旅行ができた感じです。

その間、いろいろ考えたなー。

小説って読者によって、そして同じ読者でも時期によって、いろんな読み方がありますよね。

まず、物語の世界について。

登場人物は、「蒼穹の昴」「珍妃の井戸」はご存知西太后だったり、乾隆帝(の亡霊)だったり光緒帝だったりという皇族やそれを取り巻く人々。「中原の虹」「マンチュリアレポート」は張作霖とその周りの人たち。「天子蒙塵」はラストエンペラーこと宣統帝溥儀や張学良です。

そんな実在の人物に架空の人物を絶妙に絡ませています。

その登場人物の行動を描きながら、全編を通して「天命」がテーマだったと感じます。

「天命」についての僕の解釈は、自分が何しにこの世の中に生まれてきたか、ということを考えること実行すること、もしくは目標そのものなどを2文字にひっくるめた「概念」です。

他の表現でいえば「運命」とか「キャリアゴール」、「パーソナルミッション」とか「志」とか。

特にその中でも「中華皇帝」という、とんでもない大きな役割を「天命」の象徴として描いてます。

その天命を「望まないのに負わされた人」「望んで追っかける人」「翻弄される人」「持ってると信じている人」「繋いでいきたいと考えている人」が代わる代わる出てきて営みを繰り広げます。

そして「没法子(メイファーヅと発音するらしい)」=仕方がない、どうしようもない、という何度も出てくる象徴的な表現とともに天命を仕方なく受け入れる人と、なんとか抗ってそれを変えてみせようとする人の物語だと理解しました。

また、この物語の象徴である「中華皇帝」の意味での天命は、常に「民の平安」を基準とするものにもたらされる、という描き方をされています。

「我が勲(いさおし)は、民の平安」という言葉が人を代え、場面を代えて何度も何度も何度も語られるのです。

大きな志を叶えようとすればするほど世のため人のため、って思わないと叶わないんじゃないかな。自分だけのためだとやっぱり「天」という言葉で表現された「公」とか「世間」とかが味方してくれないんだろうな、と解釈しました。

当然、中国を統一して治めるというレベルとは全く規模や意義、難易度は全く違うものの、僕らも日々仕事をしながら人間としての一生を過ごしていく中で、キャリアゴールを追うことの意味や、それに対する姿勢を考える良い機会になったな、って思います。

つい、疲れてしまって人生のファイティングポーズを解いてしまい「どーでもいいや」なんて思ってしまったり、「あいつのせいで、こんな風になってしまった」って他責にしてしまったりすることって、あると思います。

もちろん、長い人生そういう時期があってもいいのですが、「没法子(メイファーヅ)」と言わず「我が勲は、民の平安」と気持ちを持ち続けることはその気になれば誰でもできることだったりするんじゃないか、って強く思いました。

小説家ってすごい

また、物語の世界を外れた、表現などの話については次のようなことを考えました。

・何千ページにも及ぶ長編でも読者を飽きさせない表現の多彩さは圧倒される。

・史実をよくここまで調べたなあ。

・描き始めから現時点の最新まで四半世紀近い年月が経つのに、メッセージがブレてない。

・伏線とその回収の間が壮大で、かつ今後も期待させる未回収の伏線もあり、よく考えたなあ。(毛沢東がそろそろ出てくるんじゃないんか?)

・中国語も喋れるのかなあ。

などなど。

自分でも文章書いたり、ジャンルは違うものの本を出版するという作業を経験してみて、なおさらこの長編小説を書くという仕事のすごさを感じた次第です。

同時並行でいろんな本も読んでましたが、2ヶ月もはまっていた「蒼穹の昴」の世界から離れるのはなんか寂しいですが、またいろんな本に手を出して新しい出会いを探していきたいです。

なんか面白い本があったら教えてくださーい!

皆さんは、この本を読んでどう思われるでしょうか。

f:id:eitarokono:20181216170129j:image