こんにちは
印象的な邂逅
今から3年ほど前の年末、出版社のクリスマスパーティに参加していたときのことです。
宴も佳境をすぎたころ、ちょっとコワモテの見た目年齢不詳の男性から声をかけられました。
「ボクね、変態なんですけど、お友達になってくれません?」
差し出した名刺は天下の「博報堂」。その人の名は、川下和彦さん。
2月にディスカヴァー21から「コネ持ち父さん、コネ無し父さん」を出版されたネットワーク造りの達人です。
「変態」という言葉は、僕の日常ボキャブラリーにはなかったので、かなりたじろぎました。少なくとも”狭義”の変態の方とはあまり接点をもったことが無く、当面、接点を持たせて頂く予定はなかったためおそらく相当戸惑いの表情を示していたはずです。
うろたえる僕を尻目に、それほど愛想があるというわけでもない表情で、淡々と共通の知り合いの名前を出しながら距離を縮め始め、さらにこう続けました。
「ボクね、変人の会というのを、主催していまして。こうのさんも絶対に変人なので、是非参加してもらいたくて」
これを聞いて、「変態」が「変人」に格上げ(?)されていることに安堵しながら、スーッとボクの中の警戒の壁がおりていくのを感じたのを良く覚えています。
このいきさつをみても、彼が如何に懐に飛び込むのが巧いか、相手にインパクトを与えつつ、どうすればネットワークできるかをよく考えておられるかが分かると思います。
ネットワーク造りの指南書
この本は、川下さんの書籍としては二冊目の著作です。
出版の報に接しタイトルを見た瞬間、この人ならではの本だと思いました。
なにしろ、リアルの彼のネットワークはすごいです。
広告代理店に勤務されているのだから、有名人との接点がすごいだろう、という一般的にありがちな想定を超えるネットワークをお持ちです。
いわゆる有名人の方のみならず、僕らを含む一般の方(とはいえ日々一生懸命生きている人が多いです)とのネットワークを持ちながら、それぞれちゃんとメンテナンスをしておられるのです。
書籍に書かれているとおり、テイクよりもギブを重視しておられることはよくわかります。僕なんかにも価値あるネットワークを紹介いただき、その方々から日々刺激を受ける毎日です。
その素晴らしいネットワーク造りの神髄を惜しげも無く紹介してくださっているのが本書です。
僕もネットワーキングの重要性はよく理解しるつもりです。そしてそれなりにネットワーキングには自信があったのですが、本書を読みながら反省することたびたび。
著者ご本人を存じ上げているだけに、たしかに川下さんはこの通り実行されているというのを確認できました。そしてさらに、ここまで考えておられたのか、と改めて圧倒されました。
本書は、ネットワークの構築に関連するテクニックもさることながら、その根底にある考え方を指南してくれますし、キャリアや生き方についても考えるきっかけになる良書です。
中長期的な視野でネットワークを活かす
僕は「実践の書 ステップ3: おコネ持ちスパイラルを起こす」の章にある「功徳(くどく)」について説明した一文に非常に感銘を受けました。
「功は今を照らし、徳は晩節を照らす。
功に溺れて、徳を見失う事なかれ。」
僕もそうですが、得てして人間は目先の利益に走りがちです。これを戒めるための良文だと思います。
こういう心構えで、川下さんはネットワークを構築されてきたんですね。
いままでの自分の行動を反省するとともに、今後も大いに参考にしたいと思いました。
偶然ですが僕の監修書では、リーダーシップを担うキャリアステージに至った人は、会社以外のネットワークを構築する事こそがその後のキャリアを伸ばすための必須条件である、と主張しています。
一方で具体的にどうすれば良い、というところまでは書籍の主旨から踏み込んで表現指定はいません。川下さんの書籍は、その欠落部分を具体的に解説してくれているようにも思います。
川下さんも「コネ持ち父さん...」の中で、懇親の割合としては外部ネットワークが9割、社内は1割と仰っています。ある一定層を超えると所属組織以外のネットワークを重視する事でより価値のある仕事ができるのでしょうね。これについては僕も実感があります。
様々な立場やキャリアステージの方にも参考になるはずです。
みなさんも本書を手に取って参考にしてみてはいかがでしょうか。