大軍を率いるということ

こんにちは。

僕は幸か不幸か、買収や転職などで、所属先が、小さな組織から大きな組織へ、またその逆を何度も経験しているため、この比較で経験的に見えているものがあります。

企業や団体が成長し、チームから組織への転換点を迎えるとき、リーダーが最も配慮しなければならないこと、今日はそれについて考えてみたいです。

大組織のリーダーの決断

ローマ共和国のジュリアスシーザーは「ここを越えれば、人間世界の悲惨。越えなければ、我が破滅。進もう、神々の待つところへ、われわれを侮辱した敵の待つところへ、賽は投げられた!」といってローマ法で禁止されていた首都ローマへの進軍を行いました。(塩野七生ローマ人の物語」より)

日本海海戦連合艦隊を総司令官として率いた東郷平八郎は、バルチック艦隊を前にして静かに右手を左に動かし、「東郷ターン」と言われる取舵の指示を出したそうです。

これらの指示は何日もかけて練られた作戦の上にある指示であったのと同時に、もし、この意思決定が「でもなー違法だからルビコン川わたるのやめよっか」とか「あ、やっぱ、おもかじー」などと気軽にやってしまったら。。。。

おそらく、暦にはJulyやAugustは無かったでしょうし、我々はロシア語をしゃべっていたかもしれません。

友達同士の相談事なら、これで良いでしょうが、大組織はそう簡単に思った通りに動かせません。万単位のメンバーからなる大軍は壊滅状態になるはずです。

”フレキシブルな意思決定”は大組織においては大混乱の原因になるのです。

 「価値」がリスクへ...

知った顔が集まり、声をかければすぐに意思が伝わる範囲のチームから、より大きな組織へと脱皮しようとする企業や団体が経験しなければならない変化があります。

それまで”価値”だと思っていた「フレキシビリティ」が、180度変わって、”リスク”になることです。

その変化にいち早く気づき、対応できないリーダーや組織は、今以上には成長できないばかりか、組織を揺るがしかねない大きなリスクをかかえ続ける事になります。

具体的にいうと、意思決定は一度行われると大軍がそちらに向かうためにはとても大きな労力が要ります。

また逆に、一度決めた事をすぐに覆すと、組織自体に大混乱が発生します。

端的に、情報が全員に伝わるまでの時間や正確性が全く異なるため、「右向け右」「あ、やっぱり左」とやった場合、小さなチームならばすぐに伝わり、対応も瞬時に可能です。相手もあなたのことをよく知っているので、「あ、次にまた変更の指示が来るな。。。」と予想できたりするので、前もって準備できます。

これが大きな組織だと、まず、「右向け右」が一回だけでは伝わりません。なんども何度も繰り返す必要があります。伝言ゲームの途中で「右向け右。まあ目線だけでいいよ」というような余計な情報が加わったりするので、何度も何度も丁寧に情報発信する必要があります。

そして、やっとリーダーが思った方向に大軍が進み始めるのです。

大組織を経験していない人は、「意思決定が遅い」「スピード感が鈍い」と簡単にいいますが、それは「言うは易し」の世界なわけです。

成長に必要不可欠な発想の転換

 伸びているチームは、全体が自信にあふれています。その自信自体は良いこと。それは持ち続ければよい。

ただし、既に述べたように同じやり方は通用しません。むしろ、それまでの成功体験は自分を傷つける刃になるのです。

「このままのモメンタムを維持して、成長を目指そう!」という気合いだけではなく、大きな組織に必要なリーダーシップ・マネジメント手法を身につけ、実行する必要がある事を自覚しなければなりません。

自信にあふれているだけに、発想を変えるタイミングを逸してしまわないように気をつけましょう。

「チーム」と「大組織」の境目は、全員の顔と名前が一致し人となりが知れ渡っている状態か、そうでないかです。

もし自分のチームが、そんな大組織の段階にさしかかりはじめていたら、発想を変える決断をする兆しなのかもしれませんね。

皆さんの職場はどんな状況でしょうか?