文化に与える、地形・気候・歴史のインパクト

こんにちは。

デンマークに行ってきました 

我が家では毎年夏には海外に出かけるようにしています。

外形的には休暇なのですが、仕事にも関連させて考えています。

今年は特に、色々仕事の環境が変わったこともあり、仕事に時間を割くべきなのでは?と通常なら考えるのでしょうが、もちろん僕はそうはしません。

仕事が忙しい中でも、立ち止まって諸々考える時間が欲しいと思う、というかむしろ、そうしたほうが仕事もうまくいくと考えるようにしてます。

あと、曲がりなりにも父親の役割を担う者としては、すでに中学生になっている子供たちがいつまで付き合ってくれるか分からない、というカウントダウン感もあったことも確かです。

で、今年はどこに行ったか、というと実は1週間ほどデンマークに行ってきました。

手がけている事業「Bridge to the Better」の取り組みの一環として、以前イベントを企画した時に初回のテーマとして選んだのがこのデンマークでした。

イベントは仕事と生活両面を取り扱ったもので、かなりの大盛況でした。

こちらのレポートに諸々背景なども書いてあります。

eitarokono.hatenablog.com

こんなイベントを主催しておきながら、実は現地に行ったことがなく。

企画の過程や、イベント当日に得た情報に刺激され、やはり現地に行ってみたい、という思いが募ってきたのがデンマークに行くことになった大きなきっかけです。(実は元々は別のプランでした)

僕の夏の旅行のスタイルはもしかしたらちょっと変わっているかもしれません。

飛び回って名だたる名所旧跡を訪ね歩く、という方法はとらないのです。

そうではなくて、一箇所に止まり、予定も決めずに現地に入り、近辺をぶらぶらしながらその範囲を広げていく、というスタイルをとります。

このスタイルに落ち着いたもともとの理由は、子供が小さい時から一緒に旅行していたため、頻繁な移動ができない、という制限があったところから始まっています。

あとは、特に僕が時差が苦手とか、プライベートまで緻密に計画を立てたくない、とか、まあ、どちらかというと消極的な理由から始まったこのスタイルですが、やってみると結果的に満足度が高いため、つい癖になってしまいました。

ですので、ツアーに参加したりはせず、移動手段と宿泊先だけを個別に確保して、あとは行くだけ。

細かい旅の計画は、日本の空港で行きの飛行機に搭乗してから検討が始まります。

 前置きが長くなりましたが、デンマークに行ってきたことを本稿のテーマに少し絡めて雑感を列挙したいと思います。(当然の事ながら、一部しかみていない個人的な独断と偏見と愛着に基づく!文字通り雑感ですので、悪しからず)

結論として、

全てにおいて非常にリアリスティックかつロジカルな国民性であり、無駄を排除しつつも過度な自称”効率化”や”高品質化”などもしないが故に、一人当たりGDP労働生産性、幸福度指数という一見トレードオフの要素を安定的に高く保っているのだな

という感想を持ちました。

SASスカンジナビア航空で往復しました

社会人駆け出しの頃、いろんなビジネス書を読み漁ったのですが、もっとも衝撃を受けた書籍の一つがこれでした。

真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか

当時の僕にとっては、SASの社長でありこの著書の著者でもあるヤン・カールソンはヒーローの一人でした。

のちに学んだビジネススクールでケースの題材としても扱われていて、現在はそのケースは刷新されたものの、同じリーダーシップのコースを講師として担当しています。

なので、縁を感じまして。

成田からコペンハーゲンまでのダイレクトはおそらくこれだけだったので料金は他よりも高かったですが、サービスも含め満足度は高かったです。

ここでも過剰サービスはなく、定時運行で、快適な時間を過ごしました。

 ②自転車王国でした

噂には聞いてましたが、自転車が通勤通学を中心に定着してる感じがしました。

道路脇には必ずと行っていいほど自転車道が整備してあり、そこには歩行者も自動車も入らない工夫がしてました。

で、気が付いたこととしては、電動自転車が皆無だったこと。

なんでだろう?と滞在の前半に観察していたら、見えてきました。大きく原因仮説は2つ。

1)平地ばっかり。2)湿気が少ない。

もし、夏の東京で自転車で通勤したら、会社着く頃には、用水路に落ちた時のような汗だくのおじさんが出来上がってるでしょう。

さらに最近では熱中症にもなりかねません。命の危険を犯してまで地球温暖化対策に走るのは判断軸が間違ってますからね。

そこへ行くと、コペンハーゲンは、30度を下回ることが多く湿度も20%とか。

そして東京だと島国の海辺に位置し、地名も”谷”とか”山”とか”台”とか、いかにも起伏の激しい地形なのですが、広大なユーラシア大陸の一角を占めるこの国は元来平地が多いのではないかと。あまり起伏を感じないわけです。

だから自転車前提の交通網を設計できるわけだ。その結果渋滞もないし、電動自転車もニーズがそれほど高くない。

電車の中にも自転車抱えて乗りこむことが普通に想定されていて、車両の中に自転車専用エリアが準備されてます。エレベータもその前提なので縦長に設計されてる感じがしました。

そして、コペンハーゲン中央駅には、東京駅では考えられないくらい自転車置き場がありました。

ここで感じたのはいくらデンマークが「エコな社会」成功事例だからと言って、地形や気候、インフラを無視して強引に日本にモデルを持ち込むと、熱中症増加とか放置自転車の増加なんかを招く可能性もありこれまた結構な社会的コストを生んでしまうんじゃないかな、という発見がありました。

③夏の日光は重要

滞在の前半は曇りや雨が多かったのですが、後半はカラッと晴れたいい天気でした。

これも、かなりの偏見ですが、30度を越えると上半身裸の男性が現れ始めます。年齢問わず。

河原には人が大量に溢れ、集団で横たわって日光浴をしてますし、海岸はかなりの人で賑わってました。

日本で生まれ育った僕の感覚では、30度そこそこで脱がなくても、そんなに暑くないのに、と思い不思議に思ってました。

どうやら日本との違いは、暑さ故脱ぐのではなく、日光を取り込むために脱いでいるように見えます。

夏の一時期訪れただけなのでなんとも言えませんが、モノの本によると、夏の間に日光を取り込まないとそれ以外の季節があまり日照時間が多くないが故に、ビタミンDが不足して健康への影響があると言われているそうです。

日本だと避けようとする傾向の強い日光ですが、逆の発想もあるんですね。

そういえば日差しが強くても、サングラスは見かけたけど日傘は見なかった。

④サービスは必要最小限に

コペンハーゲンカードというフリーパスを使い倒したのですが、それを活用して電車は全ての移動で使いました。

ドアは、ほぼ全て乗りたいときは外側からボタンを押して開ける方式でした。日本だと北国によくあるタイプの車両ですね。

また駅員はホームには殆どいないし、駅のホームの放送や車内放送もかなり少なかったです。

人口密集が東京ほど進んでいないのか、自転車通勤などで分散できているのか東京の通勤ラッシュのような状況はなさそうです。(夏のバケーション期間だったのかな?)

だからなのか、駅員さんによる誘導や乗車補助、ホームの安全対策が必要ないのですかね。

多少遅れようが、「お待たせして申し訳ありません」というアナウンスがある訳でもなし。(個人的には山手線で「2分遅れ」で気なったことはあまりないです)

「進行方向向かって右側のドア」が開くかどうかのアナウンスもありませんでした。(右か左か分かってないと、降りられないほど混んでいる訳でもないから必要ないか)

この鉄道に乗るたびに、それほど高い期待値を持たないことが、満足度を上げる秘訣なんじゃないか、とだんだん思い始めました。

デンマーク贔屓になっていき、文字通り”贔屓目”は免れませんが、非常に合理的なシステムだなあ、と思った次第です。

⑤一度もキャッシュを使わずじまい

噂には聞いてましたが、かなり進んだキャッシュレス社会でした。

結局滞在して戻るまで、一切現金に触れず。これはすごいな、と思ったのですがコペンハーゲンだけではなく、今では世界中で当たり前なのですかね。

(海外に行く頻度が少ないため最新状況がわからないので、最近どこか海外に行かれた人、どなたか教えてください。)

その面で、滞在中一番びっくりしたのはトイレ。

鉄道駅だと、ところどころに安全上の理由からか有料トイレがありました。が、なんと入場時に全てカード決済方式でした。

クレジットカード持っていないとトイレ我慢しないといけないんです。

トイレ的に「緊急事態」だと、冷静に暗証番号打てなくて、その場で「崩壊」しかねないなあと思いました。

とは言え、キャッシュレスについては日本でも導入してもそれほど副作用はないんじゃないかな、と思いました。

経済を健全化する意味もありますしね。

⑥レジ袋有料の徹底ぶり

スーパーにはなんども足を運びました。コンビニが日本ほど多くはないから、ということもありまして。

その時に一番驚いたのが、前提としてレジ袋がないこと。これ徹底してました。というか習慣化されてました。

これも噂には聞いてましたが「要りますか?」ぐらいは聞かれるのかと思ってました。

なので、財布一つでふらっと買い物に行って、日本の感覚で買い物をしてカード決済をしたあと、両手では抱えきれない今しがた自分のモノになったばかりの元商品たちを目の前に、愕然とするすること幾たびか。

「”タダで”もらえる」と思っているものを購入することに抵抗があるため、意地でもポケットと両手を駆使して、抱えて帰る、という愚行を晒しました。

3度目くらいにはリュックなどの入れ物を持っていく、という知恵をつけましたけどね。

これにとどまらず、環境負荷の高いものについては、高い値段をつけるという経済が回っているように思います。

例えば、ティッシュやオムツの類が高いな、と感じたのとか、冷えたペットボトルと常温のベットボトルの価格差がすごい、など。

⑦英語はほぼ完全に通じる。けど・・・

英語はどんなところでも通じましたね。

英語圏に来たかのような感覚でした。

ただ、英語が完全に通じることは、現地語は知らなくていい、ということではないな、とは思いました。

中国行った時は英語は通じなかったけど、字である程度類推できることが多かったです。イタリアやスペインは、音や文字で英語やフランス語の知識から類推できるものがあったのですが、デンマーク語はこれまで僕が学んだ言葉とは距離がありすぎました。

結局、Yes / Noとか1、2、3という基本的なデンマーク語すらわからないまま帰ってきちゃいました。

カールスバーグ

特にビール好きの僕は、最初からカールズバーグを楽しみにしていました。

ついたその日に本社工場見学に行ったくらいです。(見学コースが工事中で閉まってましたが)

昼夜合わせて何リットル飲んだことか。

ところでカールスバーグって世界第4位のビール会社なんですね。

人口と面積を考えると日本の都道府県では千葉県に一番近いかな、と思うのですが(グリーンランドはカウントせず)、そこだけだと市場はだいぶ小さいので、生き残ろうと思うともともと国外に打って出るしかないわけです。

そういう宿命を持った企業は強いなあ、と思いました。

それほどこの会社に詳しいわけではないので、憶測の域は出ませんが、シンプルな味で基本を確実にやることで世界第4位のポジションを取っているんだろうと、何杯も飲みながら感じました。

あと、キャッチコピーも良いですね。「Probably the Best Beer in the World」だって。多分同意。

⑨北欧デザインの国はダテじゃない

デザインミュージアムにも行ってきました。

自分にデザインの素養があるわけではないのですが、展示物を見るにつけ、少なくともデザインを非常に大切にしている国なんだな、というのは強く思いました。

色の感覚とか、日本を含むアジアとも、南のヨーロッパとも、アメリカともだいぶ違っています。

北欧の国旗が並んでるところで思ったのですが、国旗の色使いもカッコいい。でシンプルです。

地形・気候・歴史という現実

そして、Bridge to the Betterでデンマークイベントをやった時も、たどり着けそうでたどり着けなかった問いへの答えですが・・・

なんで、デンマークでは一人当たりGDP労働生産性、幸福度指数という一見矛盾した指標で高いレーティングを取れているのか。

考え続けた結果…

論理をベースに判断をしつつも、地形や気候、歴史的背景などの現実を踏まえた意思決定をすることが広く国民に習慣として根付いていること(すなわち文化となっているところ)がこの国をこうさせているんじゃないか、という思いに至りました。

つまり、今のところの答えの仮説は、この国の徹底した「現実的な合理性」にあるんじゃないか、と。

「現実的な合理性」って、結構僕が好きな響きです。今まで思ってたことを結構説明できる。

要は合理性って理想を目指すと、現実と合わなすぎてうまく行かないです。とはいえ、あまりに現実ばかりに寄り過ぎると論理を欠いた感覚に基づく意思決定になっちゃう。

この言葉が見つかったのが今回の視察の最大の収穫かな、って思いました。

皆さんはどんな休暇を過ごされるのでしょうか? 

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