全てのビジネスパーソン向けの書『会社を変える分析の力』河本薫著

こんにちは。

今回も読後感です。

データ分析によって会社を変える

今から5年以上前の出版物ですが、以下のような本を読みました。 

会社を変える分析の力 (講談社現代新書)

会社を変える分析の力 (講談社現代新書)

 

ちなみに、アマゾンの書影ではわかりませんが、実物の帯はこんな感じ。

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日経情報ストラテジーから、データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーを贈られたようです。(多分著者の方が。)

著者は大阪ガス株式会社の情報通信部ビジネスアナリシスセンター所長の河本薫さん。

タイトルや帯の触れ込みからして、一見、いわゆる理系的な内容で、一般ビジネスパーソンには縁の無いような印象を受けるかもしれません。

しかし、実際に内容を読むと、一切そんなことはありません。

むしろ5年以上前の書籍とはいえ、今後を生きる全てのビジネスパーソンに必要な内容だ、と言うのが僕の読後感です。

「目的合理性」に立った分析

特に印象に残ったのは、こちらの図。

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 ビジネスにおいてでデータ分析は、なんのために行うのか、を冷静に根本的に考えると、ビジネス上の課題を数的根拠を用いて、解決するためです。

すなわちここでは、データを分析した結果や、分析のためのモデルが、組織のそれぞれの層で日々無数に行われる意思決定に貢献して、当初設定した課題の解決に活用されること、にあります。

これ、言われればあったりまえのことですが、なかなか実行できないのが現実です。

僕がいつも唱える、「目的合理性の担保」、「シンプルだけどイージーじゃないこと」の典型です。

簡単じゃないことの理由も著者はわかりやすく説明してくれます。

適切な意思決定のできる組織へ

冒頭の帯に描かれている絵にも出てきた「データの壁」「分析の壁」「KKDの壁」「費用対効果の壁」といったいくつかの壁が存在するのです。

実務の経験があれば、それらの壁はよく実感できます。分析する側や、それを活用する側ないしは意思決定する側それぞれが超えなければならない壁です。

これらも、全てただ漫然と読めば「ああ、その通りだね」と言う内容です。

ここでも重要なのは「そんなの分かってる」という評論家視点ではなく、「自分ごと化」とか「当事者意識」です。

この「壁」以外にも、

  • 「問題発見力」→「分析力」→「実行力」

といったデータ分析でビジネスを変えるために求められる力とか、分析力を向上させるための「4つの問い」、とか「分析者9カ条」など、著者が実務を通じて整理した実践的なノウハウや心がけが記載されています。

これがまた、わかりやすい。

もちろん「データ絶対主義」のようなスタンスをとってはいません。先に出てきた「KKDの壁」のKKDというのは、K(勘)とK(経験)と度胸(D)の略語なのですが、「壁」としつつも、KKDのもつ意義についても明言されています。

非常にバランスの取れた内容となっていると感じました。実際に分析作業をする人も、そうでない人も理解しておくべき内容がふんだんに盛り込まれています。

これらの考え方が「共通言語」になっている組織はいろんな場面で強さを発揮するんだろうなと思います。

新書版で200ページちょっとです。是非手にとって見ていただければ。

皆さんはどうお感じなるでしょうか?